「沸」小さく円らな光

日本刀を鑑賞するときの専門用語に「匂」の対として「沸」という言葉があります。「沸」は「匂」よりも結晶体として大きく、肉眼でもはっきりと見えます。そのため「沸」という言葉が生まれる前から、日本刀に見られる「沸」自体の美しさは、鑑賞されていたと考えられます。

「沸」が輝いている日本刀とは、小さく円らな「沸」が曇りなく綺麗に見えて、見ている人を飽きさせないとのことです。それは、ダイヤモンドのように澄んだ輝きと、真珠のようにまろやかなのです。ある名工の「沸」は、一つの日本刀にさまざまな形や模様の「沸」が織りなされ、その強弱や濃淡にリズム感があり、とても躍動的に見えるそうです。また、良いとされる日本刀の「沸」は、そのほとんどが燃え上がるようにも見えるし、その濃淡は雪が消えるように細かいものなどと表現されることがあります。これは名工が持っている、最上の質を持つ鉄を見極める目、日本刀を作る炎の色を見極める目、灼熱の日本刀に焼き入れする技、そのすべてが神業だと思わせるほど綺麗なのです。

ほとんどの日本刀に「沸」があり、大体が輝いています。しかし、その輝きにはそれぞれ違いがあります。例えるならば、ダイヤモンドにも色の違いがあると思いますが、それに似ていると考えられます。その輝きの違いは、日本刀の素材となる鉄の質の違いが大きく関係していると思います。「沸」の中にも日本刀によって、感じるものが大きく違います。気品や品格を備えているように見えるものや鋭く尖っている見えるものなどのようにさまざまです。昔は、「沸」は「錵」と書かれていました。その漢字のごとく「沸」は、鉄に咲いた花のようにきれいなのです。

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